「汎用機って言われたけど何のことを言っているか分からない」
「汎用機とオープン系って言われても何が違うのだろうか」
汎用機は一時期絶滅危惧種なんて言われたりもしてましたからね。なかなか表に出ない機械なので、理解している人も少ないでしょう。
そんな方のために「汎用機」と「オープン系」の違いを紹介していきたいと思います。
汎用機とは
一般的には、「小型化コンピューター登場前の大型コンピューター」です。別名をメインフレームと言います。この記事ではメインフレームで統一しますね。
歴史は古く、 1951年に 世界初の商用コンピューターUNIVAC Iが誕生し、世界初のメインフレームと呼ばれています。
その後IBMがあらゆる用途をカバーするファミリーSystem/360を発表した事により、商用利用から科学技術演算まで使われるようになります。
ちなみに汎用機が登場するまでは、使用する目的別に専用機を使っていましたが、汎用機の登場により1台でこなせるようになったので、「汎用機」と呼ばれています。現在のPCも汎用機と言えば汎用機ですが、当時の分け方として継承されています。
汎用機は現在でも主流となっているオペレーティングシステム(OS)や仮想化技術、ハードディスク、オンラインシステムなどの技術を生み、僕たちが使用しているコンピューターの先祖とも言えます。一般的にはメーカーの独自設計が基本で、後述するオープン系とは対に比較される事が多いです。
メーカーは IBM、Unisys、AtoS、NEC、富士通 のわずか5社しかいません。この内IBMが世界シェア80%となっています。
日本では国内メーカーを優遇している側面もあるので、IBMは30%~40%のシェアです。メインフレームの市場規模は国内サーバ市場全体の20%程度を占めています。
汎用機のメリット
古くからあるものなので、悪い印象を受けるかもしれませんが、メインフレームにはたくさんのメリットがあります。代表的なのはこの2つです。
- トランザクション処理に強い
- コンパクトなデータセンターの実現が可能
順番に説明しますね。
トランザクション処理に強い
メインフレームとオープン系を採用する際の大きな違いはここです。ものすごく簡単に言うと、処理能力を100とした場合こうなります。
- メインフレーム 120の仕事を依頼しても順番に処理をする
- オープン系 120の仕事を依頼するとパンクする
つまりメインフレームはどんなに仕事が来ても順番に対応して、処理を間違えたり、飛ばしたりする可能性は低いということです。なので、銀行などのお金を扱う処理はメインフレームが採用されているケースが多くなります。自分の出入金とか間違えられたらいやですもんね。
どの位処理されているかとを言うと
クレジットカードのトランザクションの86%、年間約8兆ドルの処理がメインフレームで行われている。またATMの290億トランザクション、1日あたり約50億ドルの処理もIBMメインフレームの上で実行されている。IBMメインフレームが処理している1日あたりのトランザクション量は300億以上あり、これはGoogleの検索処理をも上回っているそうだ。
引用先: デジタル変革で、メインフレームふたたび (1/2):EnterpriseZine(エンタープライズジン)
ものすごい量が処理されていますね。これを間違いなく処理し続けられることがメインフレームのメリットです。
コンパクトなデータセンターの実現が可能
メインフレームはメーカー独自設計が多いので、オープン系に代表されるOSやデータベース製品は動かないのが基本でしたが、現在ではLinuxやOSS(オープンソースソフトウェア)も動かすことが可能です。
さらにIBMの最新機器である「IBM z14」はクラウドコンピューティングに最適なものとしてメインフレームとして売り出されています。時代は繰り返すと言われますが、コンピューターの時代は集中⇒分散⇒集中⇒分散を繰り返しています。
専用機時代は分散、汎用機時代は集中、オープン系時代は分散、クラウド時代は集中となっており、集中の時代になりつつある現代はメインフレームも再度活躍出来る時代になってきたと言えますね。
オープン系とは
一般的には「技術仕様が公開されている(オープン)ソフトウェアで作られているシステム」の事です。別名を分散系と言います。汎用機では先ほど述べたように、メーカー独自仕様で固められていることが多く技術仕様などは外部に公開されることはありませんでした。
なので壊れたり、質問があったりしてもそのメーカーに聞くしかなかったのです。これはクローズの状態ですね。これに対してオープン系は技術仕様が基本的には公開されています。代表的なものがLinuxです。
Linuxの開発は、フリーかつオープンソースなソフトウェアの共同開発として最も傑出した例のひとつである。Linuxカーネルのソースコードは無償で入手でき、GNU一般公衆利用許諾書のもとにおいて、非営利・営利に関わらず誰でも自由に使用・修正・頒布できる。Linuxは、世界中の開発者の知識を取り入れるという方法によって、あらゆる方面に利用できる幅広い機能と柔軟性を獲得し、数多くのユーザの協力によって問題を修正していくことで高い信頼性を獲得した。
引用元:Linux – Wikipedia
コアな部分も公開されているものとそうでないものもありますが、技術者が公開されている情報を元に使用したり、修正したり、活用出来たりするのがオープン系の特徴です。
そのため、組み合わせの自由度が増します。OSはLinuxにしてWebサーバはWebShere(IBM)を使用し、残りのサーバはオープンソースでシステムを作り上げるなんてことが可能になりました。
またサーバ自体の性能向上や大幅な価格低下により、メインフレームで行ってきた大規模なシステムも安価で自由度が高いケースが増えて、オープン系を採用するケースが増えています。
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オープン系のメリット
代表的なのはこの2つです。
- 最適なソリューションを提供しやすい
- メインフレームと比べると安価
順番に説明しますね。
最適なソリューションを提供しやすい
組み合わせの自由度が高いオープン系では、実現したい方策に合わせた形で製品を選ぶことが可能です。そのため、最適なソリューションを提供しやすいです。またシステムを拡張したり、狙った機能を簡単に増やす事が出来るのもオープン系のメリットです。
自分たちに必要なものだけを選択できるのは、メリットであるということは想像つきやすいと思います。メインフレームしかなかった頃は、メーカー側が必要か不要かに限らず、機能として乗っかってきたものをオープン系では不要なものを外すことが可能になったのです。
また技術仕様が公開されているので、自分たちで修正することも容易になりました。
メーカーの人に聞かないと絶対に分からなかったことが、自分で調べて解決する事が可能になったのです。なので最適なソリューションを提供しやすくなったのですね。
メインフレームに比べて安価
メインフレームはとても高価です。私の経験ですが、機械を買うだけで、メインフレームは安いものでも3000万程度します。オープン系では200万程度あれば、機械を購入する事が出来ます。機械を買うだけで15倍くらい差が生まれます。
これに必要なソフトウェアのライセンス(使用権利)代などを含めるとより高額になります。
さらにオープン系ではOSS(オープンソースソフトウェア)も積極的に活用されているので、ソフトウェア部分のライセンスは無償でシステムを作ることが出来ます。メインフレームより安価なので、小さな企業でも導入することが可能になりました。
まとめ
メインフレームとオープン系はどちらがいいという話ではありません。どちらもメリットがあるので、使用する用途で分けていくことが大切です。
技術者としてどちらの方が今後有利かというのも現時点では難しいと思います。メインフレームは独自の道で活路があると感じますし、オープン系の技術はクラウドで活用する事が可能です。
若い優秀な技術者さんがどちらの世界でも出てきていますので、とても楽しみです。
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